ランパントリウム

植物とおどろう

シクラメンの思い出

 ガーデンシクラメンの花がどんどん咲いている。

 新しい根も生えてきた。

 シクラメンの根の成長を初めて見た。根が見える植え方にしてよかった。

 

 「花もの」にはピンと来ないことが多いけれど、シクラメンには思い出があるので育てている。折にふれよみがえる、心の底を流れる思い出だ。小学校三、四年の頃のことだった。

 当時、教室に置いてあったシクラメンが枯れつつあった。花も葉も落ち塊茎には灰色のカビのようなものが生え、教師やクラスメイトは病気だと諦めていた。

 ある日せめてカビを剥がしてやれないかと鉛筆でつついてみた。するとカビが身じろぎし、直感的にこれはカビではなく昆虫の一種、おそらくカイガラムシだと思った。病気を治すのは無理でも虫なら駆除できるかもしれない。その場でカイガラムシを一匹ずつ引き剥がす作業を始めた。

 カイガラムシは塊茎を覆い尽くしていたが数日かけて駆除した。しばらく経つとシクラメンは新しい葉を伸ばし始めた。

 以上がシクラメンの思い出、枯れかけた植物の再生を手助けした最初の記憶になる。

 確かめたわけではないのだけれど、園芸好きな人には同じような経験のある人が結構いるのではないだろうか。自分から植物に働きかけて得た経験は、眺めるのとはまた違う手応えを残してくれる。