ランパントリウム

植物とおどろう

イヌワラビの前葉体

 外に出るとぬるくて生臭い風が吹いていた。冬の間朽ちずに留まっていたものたちが綻んでいく、春特有の匂いだ。園芸家の場合、春に追いつかれる前に植え替えを済ませないといけない。植え替えは梅雨や秋でも一応何とかなるが。

 植え替え等で疲弊したときは胞子から育てているイヌワラビを眺めている。前葉体はまだ胞子体を出していないけれど、少しずつ増殖している。

 毎日見ていると分かりにくい。でも前のエントリーのときと比べると違いは歴然としている。

https://rampantrium.hatenablog.com/entry/2023/01/30/215641

 よく見ると前葉体の裏から白い糸のような仮根が伸びていた。

 細かすぎてよく見えないけれど、仮根を土に打ち込み、ワイヤーをピンと張って体を固定しているように見える。極小の錨を下ろしているのだ。前葉体は胞子体に比べ寿命は短いけれど、独立した生き物なのだという実感が湧いてくる。