ランパントリウム

植物とおどろう

イチョウのうろ

 街路樹の周りではいろいろな生き物が暮らしている。虫や鳥はもちろん他の植物が住み着いていることもある。

 このイチョウのうろ(樹洞)にはシダが生えている。

 種類はイヌワラビとイノモトソウの仲間のようだ。うろに土が溜まるなどして天然の植木鉢になっている。イチョウが強剪定されているために日当たりがよくなっているのは、ちょっと皮肉な話に思える。

 しかしイチョウもいつまでも軒先を貸しているばかりではない。うろは折れた枝が腐って空洞化したものなので、木はうろを塞ごうとする。これは同じイチョウの去年の冬の写真。

 うろのフチが厚く盛り上がっている。樹皮が成長し、左右から巻き込むように塞ぎ始めているためだ。このままだとうろは閉ざされ、したたかなシダの命運は尽きる。とは言え完全に閉じるにはまだ何年もかかるだろう。

 三年後くらいにまた続報をお伝えしたい。

シンジュ

 最近名前を覚えた木、シンジュ。ゾロっと長い葉を振り乱したスタイルがトレードマーク。

 この株は街路樹のように道路脇に生えているが、偶然この場所で種から生えたものではないかと思う。街路樹としては植え方が変だし、シンジュの種は風に乗って飛ぶ形をしているからだ。

 ヌルデやハゼノキなど似た木が多く、影が薄い。しかしよく探してみると街の至るところに生えていることに気づかされる。雑木界のモブキャラと呼ぶことにしよう。

 道路脇で刈られては生えを繰り返している。再生力は強いようだ。

 これは冬の落葉した形態。

 大きな白い葉痕が冬のトレードマーク。枝をナイフでそぎ落としたような独特な形をしており、この姿の方が一目でシンジュだと識別しやすい。葉がある時期よりも落葉した時期の方が個性的に見える、珍しい木だ。

無限再生能力

 形を失いつつあるマテバシイの切り株を見つけた。幹は朽ち、平らな部分がない。公園内の木で、切られてから何年も経つのだと思う。

 外輪山のように残った根もと部分は生きており、ひこばえが生えていた。

 力強く天を目指している。

 ひこばえを生やすかどうかは木の種類である程度決まっている。マテバシイはどんどん生やす種類だが一方でほぼ生やさない木もいる。ひこばえを無限に生やせた方が何度でも再生できて安心のように思える。しかし生やさない木が実際にいる以上、生き延びるのには再生能力が全てではないのかもしれない。例えばひこばえを予備の幹と考えた場合、作り過ぎるのはエネルギーの無駄とも言える。

 ひこばえから木がどうリスクに備えているのか、どんな生存戦略を採っているのか想像すると、散歩道の街路樹もいつもと少し違って見えてくる。

超個体

 ヌルデの群落。一昨年の夏ごろの様子。頻繁に刈り込まれているので丈は腰の高さくらい。

 どこにでも生えているのが気になり、去年の秋に種を採って播いた。昨日根が出た。

 ヌルデは以前のエントリーで地味な紅葉として取り上げた雑木。以後もときどき見に行っているが、大きくなるわけでも小さくなるわけでもなく、変わらず道路脇で揺れている。

https://rampantrium.hatenablog.com/entry/2020/12/03/210000

 最近、ヌルデは根からも芽を生やすことができるのだと知った(根発芽性という)。道路脇にたくさん生えていたヌルデは地下で繋がっていて、一つの個体だったのかもしれない。個体性を超越したものが身近に息づいていると思うと、ちょっと不思議な気持ちになる。

キンモクセイ

 キンモクセイの香りが漂ってくると本格的に秋なのだと感じさせられる。国内のキンモクセイは実ができないため、見かけるのはほぼ全て人が植えたものだ。身近だけどよく見たことが無いので観察することにした。

 甘い香りを辿ると遊歩道に出た。キンモクセイが道路脇に行儀よく並んで花を咲かせている。

 たわわに咲いているのに蝶や蜂が来ておらず、周りはひっそりしていた。虫がいないと無人の街のようで怖い。

 あまり話題に登らない葉を見てみる。常緑樹だから一年中見えているはずである。

 そうか、こんな顔つきをしていたのか。常緑樹の葉にしては厚ぼったくない。他の常緑樹と見分けるのに便利な特徴だ。

 街中に植えてあるのは冬の街路に緑の彩りを添える意味もあるのかもしれない。植えてある場所も覚えたので、これからは花の時期以外もときどき覗いてみることにしよう。

 

ぶつ切り街路樹

 こんばんは。

 冬の落葉樹は枝がよく見えます。しなやかに伸びる枝は美しいです。

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 しかし街なかでは電柱のような街路樹もよく見かけます。

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 ぶつ切りの幹から針金のような枝がヒョロヒョロ出た街路樹が、延々と並んでいます。見通しが良すぎて寒々しい光景です。

 どうしてこんな樹形になったのでしょうか。それは過剰な強剪定、樹高を低く抑えるための管理方式がとられているためです。

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 この樹には幹と小枝しかありません。小枝は胴吹き芽という非常用の枝です。幹の吹き出物みたいな出っ張りは剪定瘤です。同じ場所が何度も切られるとできます。


 落葉前の様子を見てましょう。十月半ばの写真です。

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 サボテンのような樹冠でした。胴吹き芽ばかりなので幹から直接葉が生えているように見えます。夏場に木陰を求めるには少々頼りなさそうです。

 スペース的には余裕があるようですが、枝は広がっていません。ちぢこまっているように見えます。


 少ない剪定回数で樹高を抑えようとした結果、こうなったのだと思われます。細かい剪定を何度もする方が樹形は整うし、樹への負荷も少ないです。


 ぶつ切りで電柱みたいでも、緑がないよりはずっと良いです。でも公共の場に置くものとしてはちょっとどうかなと思います。

ジミジガリ

 こんばんは。

 前に書いた道路脇の樹のその後を見に行きました。

https://rampantrium.hatenablog.com/entry/2020/04/03/234052

「ヌルデ」は変わらずそこにあり、紅葉していました。

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 葉はベコベコしています。油絵の具を重ね塗りしたようなこってりした色合いです。

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 葉軸に翼(ヨク)があるのがヌルデの特徴です。翼まで赤く染まっています。

 地味な紅葉を探す行為を、地味じがりと名付けました。