こんばんは。植物の葉の羽状複葉という形態が好きです。軸の両脇に複数の葉が並び羽毛のような形になった葉です。無数の切れ込みがありながら安定していて、植物にしか作り出せない形です。そんな生きた芸術品の種を道端で拾いました。
道端にカヤの実がゴロゴロ落ちていたので、拾って植木鉢に播きました。種を翌年まで保存せずすぐ播くことを「採り播き」と言います。発芽率が変わったりもしますが、保存すると忘れそうなので採り播きにしました。スモモのような色で粉を吹いています。
カヤはあまり馴染みのない植物ですが、材木として将棋の棋盤に使われています。イチイの仲間で、尖った平たい葉がこんもりと茂ります。暖かい地域の山や神社仏閣に生えていることが多いです。
果皮を取って種を取り出したところです。アーモンドによく似ています。精油を多く含んでいるため葉をちぎると柑橘系の香りがするそうです。果皮を取るときも清々しい香りがしました。
指で強く摘むと果皮がヌルッと取れました。それから網で包んでもみ洗いをすると、残りの果肉も取れます。果皮や果肉には発芽阻害物質があるので入念に取り除きます。
播きました。種蒔きに使う、肥料の入っていない土です。
カヤには古代生物のような神秘性を感じます。葉が硬質で棘や鱗に似ているからかも知れません。フルーティな実からは想像がつかない姿です。
遊歩道でネムノキの種を拾ったのでこちらも播きました。
ネムノキはマメ科の樹です。人の背よりも高くなり、細かな葉の並んだ枝を展開します。豆の仲間である証拠に、種は鞘に包まれています。遠目には紙片のように存在感がなく、持ち上げて開かないと種の有無を確かめられませんでした。
ネムノキは先駆植物であり荒地でも育つことができます。街中でも小さな空き地が出来ると芽生えてきます。写真の鞘は薄くペラペラで、鞘ごと風に飛ばされていくのだろうかなどと思いました。
果肉はないので直に播きます。カヤと逆に成長が速く材は脆いそうです。水を切らさないようにすれば来春芽吹くはずです(この点はカヤも同じです)。
ネムノキは夏に美しい花が咲きます。種から育てると花をつけるのに十年かかるらしいのですが、これは不思議なことだと思います。荒地に侵入して素早くニッチを独占する生態なら、早く開花して次の世代を作った方がいい気がします。育てていけば謎が解けるかもしれません。
こうして謎めいた二種類の植物を播種しました。2030年にネムノキの花が咲いたら、またここでご報告しようと思います。